暗号化は機密性を守ります。通信を続けるには、代替計画とネットワーク経路が必要です。
インターネット遮断時の安全な通信は、常にある根本的な問いに左右されます。まだ利用できる接続は何か、という問いです。エンドツーエンド暗号化(E2EE)は転送中のメッセージ内容を保護できますが、ネットワーク経路が一つもなければ、新たな接続を魔法のように作り出すことはできません。
イランでのインターネット遮断への備えは、障害が始まる前に行う必要があります。安全と連絡手段を保つため、必要なツールを公式の配布元からインストールし、連絡相手の本人確認を行い、信頼できる人たちと代替の通信計画を立ててください。
1. まずネットワーク障害の種類を見極める
「インターネット遮断」という言葉には、対象を絞ったブロックからデータ接続の完全な停止まで、幅広い状況が含まれます。通信事業者やインフラが異なるため、同じ市内にいる2人の利用状況がまったく違うこともあります。メッセージアプリの設定を変える前に、現在のネットワーク状況を確認しましょう。
- サービスのブロックや技術的な障害: 一部のサービスが開かなくても、タイムアウトだけでは検閲による遮断の証拠になりません。
- 速度制限と不安定さ: 接続はあるものの、音声・ビデオ通話や大容量ファイルの送信に十分な帯域がありません。
- 国内ネットワークだけへの限定アクセス: 国内の一部経路は使えても、国外の接続先への通信が制限または遮断されています。
- 選択的なアクセス: 固定回線とモバイル回線など、特定の通信事業者や接続種別によって利用可能な範囲が異なります。
- データ通信の完全遮断: 固定回線もモバイル回線も、通信やデータの経路を提供していません。
重要な助言: 状況は慎重に試してください。まず、一般的で軽量なウェブサイトを開きます。開けたら、安全なチャネルで信頼できる相手に連絡しましょう。接続エラーが出た直後にセキュリティ設定を変えたり、出所不明のブロック回避ツールを入れたりしてはいけません。接続の失敗は、暗号が破られたことを意味しません。
2. 機密性と可用性は別の問題
正しく実装されたエンドツーエンド暗号化は、送信者の端末から受信者の端末までメッセージ内容を保護します。そのため、インターネット接続事業者や監視機関など、通信を中継する者が内容を読むのを防げます。
ただし、暗号化は次のことを保証しません。
- メッセージが必ず宛先に届くこと。
- 送信時刻やメッセージの大きさなどのメタデータが隠れること。
- スマートフォンのロックが解除されている、端末を共有している、またはマルウェアに感染している場合の安全性。
- 画面上の通知が他人に見えないこと。
- ネットワーク上で完全に遮断された経路をデータが通過すること。
暗号化は鋼鉄の金庫のようなものであり、輸送用トラックではないと考えてください。イランでのLivaraも、通行できる道路、つまりインターネットのインフラがある場合にだけメッセージを運べます。製品の主張の詳細は、Livaraのセキュリティ文書と脅威モデルを参照してください。独立した評価には、別途試験や監査の証拠が必要です。この記事は、イランの遮断時にLivaraが全国で使えること、国内の代替サーバーがあること、Mesh機能があることを確認するものではありません。
安全なデジタル通信は、次の3つの基盤で成り立ちます。
- 可用性: 端末と必要なサービスの間に、利用できる経路があるか。
- 内容の機密性: この種類の会話にエンドツーエンド暗号化が使われているか。相手の鍵を信頼できるか。
- エンドポイントの安全性: 画面ロック、相手の本人確認、端末の物理的な安全を管理できているか。
補足: メッセージが届いたからといって、ネットワークが私的であるとは限りません。同じように、届かなかったからといって内容が漏れたとは限りません。
3. 障害前の備え:端末とアカウントを準備する
初期設定は、ネットワークが安定している間に済ませてください。Google PlayやApp Storeなどのアプリストアがブロックされたり、確認用SMSを受信できなくなったりすると、登録や復旧が困難または不可能になる場合があります。必要な依存先はサービスごとに異なります。
- 公式の配布元から入手する: アプリは製品の公式配布元からのみ取得してください。知らないグループで送られてきたAPKをインストールしてはいけません。
- 更新して起動する: OSとアプリを最新に保ちます。更新後は一度アプリを開き、正常に動くことを確かめてください。
- 登録を完了する: 遮断前に登録と復旧コードの設定を済ませます。
- 連絡先を先に追加する: 重要な人を連絡先に加え、危機の最中に新しい情報を交換する必要がないようにします。
- 別経路で本人確認する: 電話など別のチャネルで相手の身元を確かめます。Livaraにセキュリティコードの比較などの本人確認機能がある場合は、それを利用してください。
- 端末の物理的な安全を確保する: 長く強固な端末のパスコードを設定します。
- 通知を管理する: ロック画面のメッセージプレビューを無効にします。
- セッションを確認する: アプリに端末管理機能がある場合は、有効なセッションを確認し、自分が管理できない端末のアクセスを、その製品の手順に従って取り消します。
- 不要な保存を減らす: 機密ファイルの余分なコピーを見直します。必要な証拠や重要な情報を慌てて消さず、ファイルの削除がすべてのコピーの消去を保証するとも考えないでください。
- 機密性の低い情報をオフラインで保管する: 必要な電話番号や合意済みの集合場所を紙に書き、安全な場所に保管します。
4. 重要な連絡のための代替計画を立てる
一つのアプリや一つのネットワークだけに頼るのは、脆弱な方法です。障害が起きる前に、信頼できる相手と次の4点を決めておきましょう。
- 連絡を試す時間帯: 連絡する時刻を具体的に決めます。これにより、過剰な電池消費や繰り返しの送信を防げます。
- チャネルの優先順位: 最初の経路が使えなくなった場合の第2、第3の経路を決めます。たとえば、最初はLivara、次は通常のSMSです。
- 切り替えの基準: どれだけ待つか、何回失敗したら、安全性の低い代替手段へ移るかを決めます。
- 普段と違う依頼の確認: 既知の独立した連絡経路を決めます。家族の合言葉は補助的な手がかりになりますが、漏れたり録音されたりすると再利用できるため、本人である保証にはなりません。
簡単な計画の例:
「決めた時間帯にLivaraを確認する。メッセージがなければ何度も送らない。無事を知らせるなど、機密性の低い連絡には通常の電話を使う。身体の安全が確認できる場合にだけ、あらかじめ決めた集合場所へ向かう。」
注意: 相手が応答しないことは、必ずしも危険を意味しません。停電、電池切れ、ネットワーク混雑が原因かもしれません。事前の合意は、慌てた危険な判断を防ぎます。
5. 厳しいブロックや通信品質低下の際にできること
国際接続の一部がまだ使えるなら、メッセージアプリは不安定ながら動き続ける場合があります。この状況では、短いテキストのほうがネットワークのボトルネックを通過しやすくなります。
- 短いテキストだけを送り、その後は待ちます。
- 写真、動画、音声メッセージの送信や、グループ内の不要な活動は避けます。
- 接続エラーが出ても、アプリを削除して入れ直さないでください。再びログインできなくなる可能性があります。
- 画面の使用や不要な操作を減らします。省電力モードは通知やバックグラウンド動作を制限することがあるため、合意した時刻にアプリを開き、受信を確認してください。
- 送信済み、配信済み、既読などのチェックマークは、そのアプリの公式文書に沿ってのみ解釈します。
- 特に重要なメッセージは、独立したチャネルで受信確認を取ります。
VPNなどIPアドレスや通信経路を変更するツールは、ブロック下で役立つ場合がありますが、インターネットのインフラへの安定した接続を必要とします。出所不明のツールに不要な権限を与えたり、端末のセキュリティ保護を無効にしたりしてはいけません。
突然インターネットが復旧しても、すぐに大量の機密情報を送らないでください。接続はまだ不安定だったり、監視されていたりする可能性があります。
6. 「国内インターネット」だけの状態では何が起こるか
国内ネットワークだけが使える状態では、スマートフォンにWi-FiやLTE/4Gの表示があっても、イラン国外のサーバーとは接続できません。
各メッセージアプリに接続できるかどうかは、ログイン、鍵の配布、メッセージ配信、メディア、通知など、すべての依存先の場所と可用性に左右されます。国内のウェブサイトが開けても、同じサービスの別の部分が国外の経路に依存している場合があります。通常のSMSや電話も、電話網が動いている場合にだけ利用できます。
この状況で「国内のメッセージアプリはすべて動く」と言うのは正確ではなく、試さずにLivaraへの接続を断言することもできません。接続の種類を判断するには、この記事の「1. まずネットワーク障害の種類を見極める」を確認してください。
プライバシー上の注意: サーバーの所在地だけで安全か危険かは決まりません。暗号化の範囲、鍵の管理、メタデータ、端末の安全性が重要です。通常のSMSをエンドツーエンド暗号化されたチャットと同じだと考えず、経路が使えるという理由だけで機密情報を移さないでください。
7. インターネットが完全に遮断されたらどうするか
完全遮断では、すべてのデータ経路がふさがれます。サーバーに依存するメッセージアプリは動かず、DNSの変更やVPNの利用も役に立ちません。
「インターネットなしで使える」とうたうアプリには注意してください。Bluetooth MeshやWi-Fi Directといった技術には、通信距離、電池消費、収容できる利用者数に大きな制限があります。公共の場所で使うと、近くの人に端末の存在を発見される可能性もあります。Livaraの公式文書がオフラインのMesh通信機能を確認していない限り、その機能があるとは考えないでください。
完全遮断時の代替手段:
- あらかじめ決めた集合時刻と場所を頼りにします。
- 紙に書いた必要な電話番号を使います。
- 満充電のモバイルバッテリーを利用します。
- 通常の音声通話やSMSを使います。ただし、機密性の低い日常的な調整に限ります。
- ラジオや信頼できる地域のニュースを聞きます。
デジタル接続を取り戻すために、身体の危険を冒してはいけません。衛星機器の使用にも、安全上のリスク、現地の法律、信号の追跡に関する問題の慎重な検討が必要です。
8. 端末、メタデータ、身体の安全を守る
通信経路の暗号化は、ロックが解除され操作できるスマートフォンに表示された内容を、他人が読むのを防ぎません。
- 自動画面ロックの時間を短く設定しつつ、使い方やアクセシビリティの必要性にも合わせます。
- ロック画面のメッセージプレビューを隠します。
- マイク、カメラ、位置情報、連絡先など、アプリの権限を確認して制限します。
- 機密性の高い会話のスクリーンショットを撮り、写真一覧に保存するのは避けます。
- 非公式のLivaraクライアントなどの非公式メッセージアプリや、知らない人が送った更新ファイルは決してインストールしないでください。
- 友人から金銭、住所、集合場所を求めるメッセージが来たら、必ず別の経路で本人確認してください。たとえば電話をかけ、本人しか知らない質問をします。
エンドツーエンド暗号化が保護するのは「メッセージの内容」だけだと覚えておいてください。使用データ量、接続時刻、IPアドレスなどのメタデータは、依然として接続事業者に見えます。したがって、暗号化されたメッセージアプリを使っているという理由だけで、完全に匿名だと思い込んではいけません。
最後に、受信者の安全も考えてください。検査される可能性のある端末や、他人の手に渡る可能性のある端末に暗号化メッセージを送ることが、相手に危険をもたらす場合があります。
短い準備シート
連絡相手と次の項目を埋め、安全な場所に保管してください。
| 項目 | 決める内容 |
|---|---|
| 第一の経路と代替経路 | ツール名と相手。パスワードや復旧鍵は書かない |
| メッセージを確認する時刻 | 具体的で実行可能な時刻 |
| 経路を変えるまでの待ち時間 | 家族やチームの状況に合わせる |
| 機密性の低いメッセージ | 調整に必要な情報だけ |
| 普段と違う依頼の確認 | 以前から知っている番号に電話する |
| 電源の確保 | 充電器、モバイルバッテリー、不要な使用の削減 |
| 行動を止める基準 | デジタル通信のために自分や他人を身体的な危険にさらさない |
今日の状況はどこで分かるか
このガイドは、インターネット状況のライブ報告ではありません。OONIは、制限がネットワークによって異なり、サービスが開かないことだけではブロックの証明にならないと説明しています。公開データは測定時刻や測定したネットワークと併せて読み、自分のスマートフォンの状態を保証するものとは扱わないでください。測定ツールを動かすとデータが公開され、現地でのリスクが生じる可能性があります。リスクの説明を読まずに、危機の際の標準的な行動と考えないでください。
役立つ備えとは、必要な情報、使う経路、待つべきタイミングを事前に把握することです。アプリを増やしても、現実的な通信計画の代わりにはなりません。



